書籍紹介

文学

戦後表現

Japanese Literature after 1945
坪井秀人 著

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価格 税込6,930円/本体6,300円
判型 A5判・上製
ページ数 616頁
発行年月日 2023年2月28日
在庫状況 在庫有り
ISBNコード 978-4-8158-1116-7
Cコード C3095

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内 容

アジア太平洋戦争から冷戦、昭和の終わり、湾岸・イラク戦争、ポスト3・11まで、戦争をめぐる言葉がすくい上げてきたもの、底に沈めてきたものを、詩・小説・批評を中心に精緻に読解。経験や記憶に刻まれた〈傷跡〉としての表現の重層性から、〈戦後〉概念を再審にかける。


目 次

序 論 〈戦後〉の再審のために
     1 ゆらぐ〈戦後〉
     2 冷戦体制の崩壊と戦後民主主義批判
     3 永すぎた戦後と〈戦後〉の危機
     4 傷/傷跡としての〈戦後表現〉

  第Ⅰ部 戦中にうたう戦争/戦後に書く戦争

第1章 戦争詩歌における前線と銃後
      ——『支那事変歌集』その他
     1 〈前線/銃後〉パラダイム —— 帝国日本の戦争とその性格
     2 日露戦争における前線と銃後 —— 櫻井忠温『肉弾』と田山花袋『田舎教師』
     3 記憶装置としての詩 —— 日中戦争から〈大東亜戦争〉へ
     4 3つの『支那事変歌集』
     5 『支那事変歌集』を読む

第2章 〈抒情〉と戦争
      —— 戦争詩の主体における公と私
     1 戦争記録文学の叙事と抒情
     2 少国民と戦争抒情
     3 銃後詩人における国民化システム —— 尾崎喜八の場合
     4 声の環流 ——「大詔奉戴」と隣組
     5 〈公〉と〈私〉をつなぐ銃後詩人たち
     6 韻律のファシズムと抒情

第3章 三好達治と戦争
     1 「おんたまを故山に迎ふ」をどう読むか
     2 自然としての死
     3 三好の戦争詩批判とその矛盾
     4 天皇の声を受肉すること、臣民の声を代行すること

第4章 ある詩人の戦中戦後
      —— 佐藤一英の位置
     1 詩と詩論の関係
     2 佐藤一英の詩論
     3 韻律学と戦争詠そして佐藤一英の戦後

第5章 パラレル・ワールドとしての復員小説
      —— 八木義徳『母子鎮魂』ほか
     1 経験の歴史化/経験の物語化
     2 〈移動〉と戦争
     3 鎮魂三部作まで
     4 鎮魂三部作の意味
     5 語りのパラレリズム(1)——『帰来数日』
     6 語りのパラレリズム(2)——『母子鎮魂』

第6章 朝鮮戦争・ヴェトナム戦争の時代
      —— 冷戦と経済成長
     1 不確定な〈戦後〉—— 経済成長期における戦争文学
     2 いまだ終わらざる戦争 ——〈第三の新人〉たちと野間宏
     3 歴史の〈重ね書き〉と〈書きかえ〉
       —— 井上光晴・大江健三郎・高橋和巳そして三島由紀夫
     4 記録と文学 —— 井伏鱒二『黒い雨』と大岡昇平『レイテ戦記』ほか

  第Ⅱ部 戦時と戦後の連続/不連続

第1章 北園克衛の郷土詩と戦争

第2章 転向を語ること
      —— 権力と告白
     1 転向か非転向か
     2 相互権力と転向
     3 『転向者の手記』と小林杜人
     4 小林杜人/小野陽一の語り
     5 全体的転向 ——〈転位〉としての転向
     6 様々な転向者たちの語り
     7 〈宗教は阿片〉—— 宗教批判は克服されたか
     8 浄土真宗と教誨師
     9 転向の原理的再考へ

第3章 戦後の変態
      —— 阿部定と熊沢天皇
     1 『猟奇女犯罪史』の中の阿部定
     2 阿部定と同時代精神分析言説
     3 戦後空間の中の阿部定
     4 阿部定から熊沢天皇へ

第4章 〈国文学〉者の自己点検
     1 20世紀の終わりに起きていたこと
     2 芳賀矢一の国学/国文学
     3 文芸学登場以降の国文学
     4 戦争責任と戦後責任の連続性
     5 戦中戦後の切断=連続

第5章 戦中戦後の跨ぎ方
      ——〈国文学〉教育=研究の場合
     はじめに
     1 榊原美文と文学教育
     2 1930年代の国文学界 —— 近藤忠義を中心に
     3 榊原美文の文学思想
     4 戦中から戦後への跨ぎ方

  第Ⅲ部 外地の始まらない戦後

第1章 場所の詩人、金子光晴

第2章 柵の中で
      —— 日系人強制収容所の中の書記空間ライティング・スペース
     1 〈日本語文学〉という領域
     2 〈アメリカ人になること〉と〈日本人であること〉
     3 〈忠誠心調査〉と日系移民たち
     4 柵の中の書記空間

第3章 旧満洲留用者たちの戦後
      —— 雑誌『ツルオカ』とその周辺
     1 徳田要請問題と木下順二『蛙昇天』
     2 炭鉱都市・鶴崗
     3 雑誌『ツルオカ』
     4 『ツルオカ』掲載の文学作品

  第Ⅳ部 戦後文学の思想

第1章 戦中戦後を架橋するゲシュタルト
      —— 花田清輝『復興期の精神』
     1 論理としてのレトリック
     2 戦後への架橋としての〈変形〉
     3 楕円のゲシュタルトと〈転形期〉

第2章 Herz und Mund und Tat und Terrorismus(心と口と行い、そしてテロリズム)
      —— 大江健三郎『セヴンティーン』
     1 2人の〈美智子〉の時代
     2 『セヴンティーン』のアイロニー
     3 テロリストの心と口と行い
     4 テロルの未決算

第3章 歴史の消費
      —— 高橋和巳『散華』『堕落』における戦中戦後の〈重ね書き〉
     1 1960年代と高橋和巳
     2 『堕落』と『散華』の同時代的文脈
     3 被害者史観とミソジニー

第4章 街頭の詩想
      —— 寺山修司と〈1968〉
     はじめに
     1 落書きが消えていく
     2 〈開かれた書物〉としての街路
     3 地理主義という思考
     4 街頭から故郷へ/故郷から街頭へ

第5章 妻の崩壊
      —— 傷跡としての江藤淳『成熟と喪失』
     1 妻のあとを追う夫たち
     2 アメリカと〈私〉性
     3 〈母〉の崩壊 —— 一つのシナリオ
     4 〈妻〉の崩壊

  第Ⅴ部 戦後詩の臨界

第1章 初期サークル運動の可能性
     1 サークル運動の中の軋み
     2 序列化の問題 —— サークルと労組そして党
     3 サークル運動における自由と不自由
     4 読む人は書く人になることができる

第2章 高度消費社会と詩の現在
     1 〈新人類〉の時代
     2 現代詩の1980-90年代
     3 技術の復権 —— 荒川洋治の位置
     4 〈女性詩〉の時代

第3章 クソ詩の戦争
      —— 藤井貞和の詩=論
     1 言霊的なるもの
     2 音韻がすりへって
     3 〈窶し〉の極限
     4 〈窶し〉から〈クソ詩〉へ

第4章 過ぎ去っていく過去
      —— 湾岸戦争詩論争まで
     1 問いの前の問い —— 忘却の世紀としての21世紀
     2 湾岸戦争詩論争前史
     3 メディア・ウォーの中の詩
     4 湾岸戦争詩論争とは何だったのか

  第Ⅵ部 戦争から遠く離れて

第1章 プログラムされた物語
      —— 村上春樹『羊をめぐる冒険』
     1 『羊をめぐる冒険』を一篇として読むこと
     2 教養小説的範型を裏切る
     3 プログラムされた物語

第2章 ポストバブルの〈アブジェクト〉
      —— 吉本ばなな『キッチン』から桐野夏生『OUT』へ
     1 バブルの時代の夢みるキッチン
     2 コンビニの光と闇
     3 ポストバブルの〈崩壊〉感覚
     4 〈無気味なもの〉の原理
     5 ポストバブルの〈アブジェクト〉

第3章 幸いなるかな忘れゆくもの
      —— 危機としての戦後60年
     1 忘却という病
     2 忘れていく私たちの危機を語る言葉
     3 忘却を写す、忘却を戒める

第4章 転形期としての1989年と元号問題
     1 香港2019・6
     2 ベルリン1989・11
     3 東京1989・1
     4 元号問題への序奏 —— いまだ始まらない〈平成〉と〈令和〉

第5章 生者と生きる
     1 よみがえる〈演説〉—— SEALDsの衝撃
     2 オバマ・広島スピーチをどう聞くか
     3 〈ポスト3・11〉の死者論言説(1)—— 小説における
     4 〈ポスト3・11〉の死者論言説(2)——- 批評における

 注
 〈戦後後〉を見とどける —— あとがきに代えて
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